2026年ICPF・JWAC共催セミナー「障害者による企業経営:freeeの実践に学ぶ」開催報告

2026年8月6日(木曜日)に2026年ICPF・JWAC共催セミナー「障害者による企業経営:freeeの実践に学ぶ」をオンラインで開催いたしました。
講演者として、木村 康宏(フリー株式会社常務執行役員CPO 社会インフラ企画部長)にご講演いただきました。

開催概要

開催日時

2026年8月6日(木曜日)
午後7時から1時間半程度

会場

zoomでのオンラインセミナー

講演者

木村 康宏(フリー株式会社常務執行役員CPO 社会インフラ企画部長)

司会

山田 肇(ICPF理事長、JWAC理事)

講演内容の概要

木村氏は資料を基に次のように講演した。
木村氏の資料はこちら外部サイトを新しいタブで開きます

  • フリー社(freee)は2012年に創業し、クラウド会計ソフトを主力製品として提供している中小企業向けのソフトウェア会社である。同社は、請求書作成アプリ、人事労務管理アプリ、健康管理(ストレスチェック)アプリなど、障害者や高齢者も含む幅広い利用者にアクセシビリティに対応した製品を提供している。
  • 会社としては、独自のアクセシビリティガイドラインの作成・運用、全社員への研修実施、デザインシステムの標準化など、体系的な取り組みを実施している。
  • 社員2000名を抱える大きな企業に成長したが、相対的には障害当事者は少なく、社内でのアクセシビリティ意識の維持と継続的な専門人材の確保が今の課題である。
  • 総務省の情報アクセシビリティ好事例に、同社アプリは2023年度、2024年度と連続して掲載された。インボイス制度対応の請求書アプリが文字サイズ調整やダークモード、スクリーンリーダなどに対応していることに加え、社内にアクセシビリティ専門メンバーが存在し、全社員への研修、デザインシステムコンポーネントの標準化などを進めている。そして、これらに障害を持つ社員が貢献してきたことが評価された。なお、デザインシステムコンポーネントの標準化は、共通のUIを提供するのに役立っている。
  • 全職種の全メンバー向けに1時間のアクセシビリティ研修を実施し、アクセシビリティという考え⽅、障害や⽀援技術を紹介している。そして、社内での活動で考えてほしいことを説明して社員の意識を高めている。
  • 開発職やWebマーケティング等に関わるビジネス職向けには、より具体的な内容の研修を実施している。キーボード操作やスクリーンリーダの体験、アクセシビリティチェックや改善⽅法の探り⽅、ボタンやフォームなど、製品の具体的な部分の良い例‧悪い例などについての研修である。
  • 現状の課題は二つある。創業期に開発した機能や製品ではアクセシビリティが不⾜していること。アクセシビリティに関する知識や経験をもった⼈材が不⾜し、専⾨的スキルとしての認知や教育機会の充実が求められていること。
  • 講演の最後に、アクセシビリティのスキルをもつことが採⽤市場で価値となるようにしたいと考えており、そのために障害者雇⽤や⼈材確保などに絡めたアクセシビリティへの動機づけを進めていきたいとの考えを表明した。

講演後に質疑が行われ、同社アプリへのアクセシビリティ対応の歴史などについて追加的な情報が提供された。

  • アクセシビリティへの取り組みはボトムアップで始まり、志の高い情熱的な少数のメンバーから始まって、全社での取組へと広がっていった。
  • 障害当事者であるエンジニアの入社とその情報発信が、社内文化の伝播に大きく寄与した。情熱のある取り組みに共鳴した開発者やデザイナーが、デザインシステムの企画やガイドライン作成などを進めていった。

同社がアクセシビリティ対応に力を入れていることをいかに社会に知らせていくか。最終的に質疑はこの点に焦点が集まった。

  • アクセシビリティに対応する学会発表を企画している研究者は、障害を持つ研究者に学会の意図が伝わっていないという問題を語り、当事者への効果的なリーチ方法の課題を語った。
  • 木村氏は、総務省の好事例などもアウトリーチ手段の一つであるとしたうえで、当事者へのアプローチは今のところ営業活動の中で偶然に起きるだけだと語った。
  • 障害者がアプリを利用して便利さを享受している実例を広く社会に知らせるべきという意見も出た。同社ではすでにいくつかのケースを公式サイトで「ユニバーサルな働き方外部サイトを新しいタブで開きます」として公表している。
  • わが国にはアクセシビリティを強く求める法制がない。そのような制限下で企業がアクセシビリティに自発的に取り組むようになるには、アクセシビリティは社会的責任であるの認識を育てていくのが重要だという意見が出た。
  • 社の思想や製品の価値を伝えることが重要としたうえで、同社アプリがAPIを公開しているというのも、オープン性や包摂性に関する訴求点になるのではないかという意見もあった。

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