東京都の公共性の高い企業・団体のWebサイトアクセシビリティ対応調査報告(2022)
当協会では、東京都に本社/本部がある公共性の高い企業・団体のウェブサイトについて、アクセシビリティ対応と方針の公開について、どの程度取り組みが進んでいるかを2014年に調査しました。(東京都の公共性の高い企業・団体のWebサイトアクセシビリティ対応調査報告)
その後、2016年にはJIS X 8341-3が改定され、当協会でも普及啓発活動を進めてまいりました。
2014年の調査から8年が経ち、アクセシビリティ対応の現状がどうなっているかを調べることにしました。同じウェブサイトについて調査を行い、アクセシビリティ対応が進展しているのかどうかを確認しました。
調査方法
- 調査対象:
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- 2014年調査と同じサイト(サイトがない場合もありました)
- 東京都に本社/本部がある公共性の高い企業・団体のうち、以下の9業種について3,4社ずつ、計32のウェブサイト
調査対象サイト
1)政府及び独立行政法人、特殊法人等の政府関係機関、地方公共団体及びその関係機関など行政機関全体
- 独立行政法人国立美術館
- 東京国立博物館 - トーハク
- 東京消防庁
2)新聞社、放送局などの報道機関
- 朝日新聞
- 読売新聞
- 産経ニュース
- 共同通信社
3)鉄道、空港などの交通機関
- JR東日本
- 東急電鉄
- 羽田空港旅客ターミナル
4)郵便局、運輸業などの輸送機関
- 日本郵便
- ヤマト運輸
- 日本通運
5)電気通信事業者などの通信機関
- NTT東日本
- NTTドコモ
- KDDI
- ソフトバンク
6)電力会社、ガス会社、水道局などのライフライン
- 東京ガス
- 東京都水道局
- NEXCO東日本
7)病院、診療所などの医療機関
- 独立行政法人国立病院機構 東京医療センター
- 東京都病院経営本部
- 慶應義塾大学病院
8)大学、学校などの教育機関
- 東京都立大学
- 国立大学法人 電気通信大学
- 国立大学法人 東京学芸大学
- 東京藝術大学
9)銀行、信用金庫などの金融機関
- みずほ銀行
- 三井住友銀行
- 三菱UFJ銀行
- PayPay銀行
- 株式会社ゆうちょ銀行
- 調査時期:
- 2022年4月
- 調査手順:
- JWAC品質維持向上部会メンバ7名で、分担して調査を行いました。
- 調査項目:
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- 1. アクセシビリティ方針の公開
- 以下の項目について、Webサイト内への掲載の有無から評価しました。アクセシビリティ方針詳細評価基準はこちら
- (1) アクセシビリティに関する意識
- (2) JIS X 8341-3に関する意識
- (3) アクセシビリティ方針掲載の有無
- (4) 「みんなの公共サイト運用モデル改訂版(2016年度)」に則ったアクセシビリティ方針
- 2. サイトのアクセシビリティ対応
- 以下の10項目について、Webサイトのアクセシビリティ対応を評価しました。アクセシビリティ対応詳細評価基準はこちら
- トップページについて
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- (1) メニューを読み飛ばすページ内リンクがある
- (2) 全てキーボード操作可能である
- (3) ブラウザで200%に拡大してもテキストの表示に問題ない
- (4) 見出し要素が適切に使われている
- (5) 画像が点滅しない
- (6) ページを開いても自動で音声が再生されない
- (7) 画像にalt属性がある
- サイト全体について
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- (8) パンくずリストがある
- (9) 各ページの構造が共通になっている
- (10) サイトについてアクセシブルな複数の問い合わせ手段がある
調査結果の概要
- 2014年調査と同じ対象としましたが、6団体については組織が変わっていたり、ウェブサイトが消滅していたりしたため、後継組織に対象を変更しました
- 5団体はURLのみ変更になっていました
- アクセシビリティに関する意識、JIS X 8341-3に関する意識、アクセシビリティ方針の掲載について、すべて向上していました
調査結果の詳細
- 1. アクセシビリティ方針の公開
- (1) アクセシビリティに関する意識
53%の団体が、アクセシビリティについて意識していました(32件中17件) - (2) JIS X 8341-3に関する意識
53%の団体が、JIS X 8341-3について意識していました(32件中17件) - (3) アクセシビリティ方針の掲載
50%の団体が、アクセシビリティ方針を策定し公開していました(32件中16件) - (4) 「みんなの公共サイト運用モデル改訂版(2010年度)」に則ったアクセシビリティ方針
22%の団体が、アクセシビリティ方針を公開していました(32件中7件)
- (1) アクセシビリティに関する意識
- 本調査では、アクセシビリティの意識のある団体は、JIS X 8341-3の意識があり、ウェブアクセシビリティ方針も公開しているという結果でした。2014年調査では、アクセシビリティの意識があっても、JIS X 8341-3の意識はないという団体があるといった違いがありました。
- 1団体は、サイトリニューアルの仕様書が公開されており、そこにアクセシビリティ、JIS X 8341-3への対応が書かれていました。対応はこれからで、ウェブアクセシビリティ方針はありませんでした。
- 1団体は、2016年版のJIS X 8341-3に基づく方針が掲載されていましたが、試験結果は2010年版のJISに基づく結果となっていました(2010年版JISに則った方針に含めています)。
2014年と2022年の違い
アクセシビリティに関する意識
本調査の結果
2014年調査時にアクセシビリティに関する記載があったサイトは34%(32件中11件)であったのに対し、本調査の結果、53%(32件中17件)に増えていました。
JIS X 8341-3に関する意識
本調査の結果(内訳)
- 2016年版 JIS X 8341-3の記載があるサイトは、47%でした(17件中9件)(ただし1件は仕様書のみ)
- 2010年版、2004年版の記載のあるサイトが合わせて29%(17件中5件)ありました
- 何年版JISか不明なサイトは3件で、それぞれ、WCAG 1.0とJIS、WCAG 2.0とJIS、あるいは、JISを参考にしたと書かれていました
ウェブアクセシビリティ方針
本調査の結果(内訳)
- 2016年版 JIS X 8341-3に基づく方針のあるサイトは41%(16件中7件)でした
- 2010年版、2004年版の方針のあるサイトが31%(16件中5件)ありました
- 「その他」のサイトでは、WCAG 2.0やJIS X 8341-3を参考にした独自の方針が掲載されるなどしていました
- 最新のJISに対応しているサイトは、2サイトから7サイトに増えていましたが、全体の22%(32件中7件)であるという結果でした
- なお、「準拠」という言葉に関して、ウェブアクセシビリティ基盤委員会の説明があったサイトは43%のみでした(7件中3件)
考察・まとめ
- 2014年と比較して、2022年の方がアクセシビリティ、JIS X 8341-3に関する掲載も増え、ウェブアクセシビリティ方針の公開も増えていましたが、それでも22%の団体しか公開していないという結果であり、まだまだ普及が足りないと考えられます。
- 2010年版、2004年版JIS X 8341-3に関する方針も5つのサイトで見られました。一度、取り組んだ後は見直しが行われず、継続的な対応がなされていないと考えられます。
- 「準拠」という言葉に関して、ウェブアクセシビリティ基盤委員会の説明があったサイトは43%であり、JIS X 8341-3について、あまり理解されないまま、方針が作成されている可能性があります。