連載記事ウェブアクセシビリティを知ろう

連載4:JIS X 8341-3:2016解説

渡辺 昌洋
2020年6月1日

ウェブアクセシビリティの規格、JIS X 8341-3について解説します。私は、2010年版のJIS X 8341-3の改正のときに、原案作成委員会のメンバーとして原案を作成しました。その後、本協会(ウェブアクセシビリティ推進協会)の立ち上げ、ウェブアクセシビリティ基盤委員会の委員を務めるなど、ウェブアクセシビリティの普及に関わってきました。本協会では、名古屋市の職員向けセミナーなどの講師を務めています。ウェブアクセシビリティが常識となり、誰もが平等に情報通信の便利さを享受できる世の中を作りたいという思いで活動しています。

JIS X 8341-3の規格名は「高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス−第 3 部:ウェブコンテンツ」です。JIS X 8341-3の「8341」は「やさしい」の語呂合わせです。しかし、文章が「やさしい」のかは怪しいと思います。JIS X 8341-3は読みづらい、理解しづらい文章になっているのではないかと思います。この連載記事では、JIS X 8341-3の達成基準がどのような意図で設定されているかなどを解説していきたいと思います。そのことにより、JIS X 8341-3に関する理解、ウェブアクセシビリティに関する理解を深めていただけるとうれしいです。

JIS X 8341-3を説明するときに、WCAG 2.0(Web Content Accessibility Guidelines 2.0)は避けて通れません。というのは、JIS X 8341-3の中身はWCAG 2.0だからです。W3C(World Wide Web Consortium)の作成したWCAG 2.0が2012年に国際規格ISO/IEC 40500となったため、JISはISOと合わせる形で2016年に改正されました。そのため、JIS X 8341-3がWCAG 2.0の翻訳版であることをまず理解しないと、JIS X 8341-3の文章表現に違和感が生じるのではないかと思います。ウェブコンテンツ技術は、日々進歩しています。WCAG 2.0では、WCAG 2.0を基本として変えずに、細かい部分は、Understanding WCAG 2.0やTechniques for WCAG 2.0などの技術文書を随時改訂することで対応しようとしています。ガイドライン自体は変えず、技術文書の改訂で、ウェブコンテンツ技術の速い進歩に対応していくということです。そのため、具体的な内容は技術文書に書かれています。本稿では、技術文書を参照しながら、WCAG 2.0、つまり、JIS X 8341-3を解説していこうと思います。

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