連載記事ウェブアクセシビリティを知ろう

連載23:適合とは(JIS X 8341-3解説(3))

渡辺 昌洋
2022年7月19日

しばらくお休みしてしまいましたが、JIS X 8341-3の解説を再開します。よろしくお願いいたします。

今回からJISの中身に入っていきます。今回は適合の話です。皆さんは、JIS X 8341-3への適合を考えたときに規格書のどこを見るでしょうか。まず、達成基準を見るのではないでしょうか。適合を理解するためには、達成基準を見る前に5.適合を見ていく必要があります。今回から数回にわたって「5.適合」について、解説していきます。WCAG 2.0解説書外部サイトを別ウインドウで開きますも参考にしてください。

5.適合には次の4つのことが書かれています。

  • 5.1 適合要件
  • 5.2 適合表明(任意)
  • 5.3 部分適合に関する記述−第三者によるコンテンツ
  • 5.4 部分適合に関する記述−言語

まず、5.1 適合要件には、達成基準と適合の関係が書かれています。達成基準を読むだけではわからない内容も含まれていますので、達成基準よりも先に、ここを理解することが重要です。

5.2 適合表明(任意)では、ウェブページがJISに適合した場合に適合表明をすることができますが、その場合にどのような項目を表明するかが説明されています。JISでは、適合表明はしてもしなくてもよく任意となっています。

5.3 部分適合−第三者によるコンテンツでは、ウェブページの一部が第三者によるコンテンツであり、それがウェブコンテンツ制作者の意図と関係なく書き換えられてしまう場合を扱っています。例えば、広告のバナーであったり、ポータルに貼り付けられるニュース記事などが該当します。この場合は、2つの対応が書かれています。一つめは、それらのコンテンツが監視されていて2営業日以内に修正されるのであれば適合となります。ただ、常に監視して修正することは難しいのではないかと思います。二つめは部分適合です。「このページは適合していないが,制御されていない情報源に起因する以下の部分を除けば,この規格にレベル Xで適合していることになる。」などと適合表明に書くことになります。部分適合とは、あくまでも適合ではないということに注意が必要です。

最後に、5.4 部分適合に関する記述−言語は、複数種類の言語が使用されたウェブページについての項目です。言語によって、アクセシビリティ対応できる場合とできない場合がある可能性があります。「このページは適合していないが,もし以下の言語においてアクセシビリティ サポートがあれば,この規格にレベル Xで適合していることになる。」などと適合表明に書くことになります。アクセシビリティ サポートについては、別の記事で紹介していく予定です。なお、この場合も、適合ではないことに注意が必要です。

2010年版JIS(JIS X 8341-3:2010)を作った当時、この「適合」という言葉には非常に悩まされた覚えがあります。JISに「適合」する場合には、JIS X 8341-3以外にも満たすべき規格があるためです。そのため、JIS X 8341-3:2010では「適合」ではなく「試験方法」という項目に書き換えています。(JIS X 8341-3:2010の解説外部サイトを別ウインドウで開きます参照)

しかし、JIS X 8341-3:2016では、元のWCAG 2.0(ISO/IEC40500)と同じ規格、同じ文言になったため、「適合」という言葉が使われるようになりました。

引用元:JIS X 8341-3:2016 高齢者・障害者等配慮設計指針-第3部ウェブコンテンツ-

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