連載記事ウェブアクセシビリティを知ろう

連載24:適合要件について(JIS X 8341-3解説(4))

渡辺 昌洋
2022年9月15日

前回に引き続き、5.1適合要件について読んでいきましょう。

5.1 適合要件 ウェブページがこの規格に適合するためには,次に示す全ての適合要件を満たしていなければならない。

適合するためには、5.1.1から5.1.5までの適合要件を全て満たすことが必要だと書いてあります。個々の達成基準を理解する前に、適合要件を理解する必要があります。具体的には、次の5つになります。

  • 5.1.1 適合レベル
  • 5.1.2 ウェブページ全体
  • 5.1.3 プロセス全体
  • 5.1.4 技術のアクセシビリティサポーテッドな使用法だけ
  • 5.1.5 非干渉

今回は、このうち、5.1.1適合レベルについて見ていきましょう。ここでは、適合と達成基準の関係が書かれています。達成基準を見る前に、この適合要件を理解する必要があります。

5.1.1 適合レベル

次に示す適合レベルの一つを完全に満たしている。

  • a) レベル A レベル A(適合の最低レベル)で適合するには,ウェブページがレベル A達成基準の全てを満たすか,又は適合している代替版を提供している。
  • b) レベル AA レベル AAで適合するには,ウェブページはレベル A及びレベル AA達成基準の全てを満たすか,又はレベル AAに適合している代替版を提供している。
  • c) レベル AAA レベル AAAで適合するには,ウェブページがレベル A,レベル AA,及びレベル AAA達成基準の全てを満たすか,又はレベル AAAに適合している代替版を提供している。

例えば、レベルAで適合するには、レベルAの達成基準の全てを満たすことが必要です。また、レベルAAで適合するには、レベルA及びレベル AA達成基準の全てを満たすことが必要であると書かれており、レベルAAの達成基準だけでは不十分であることがわかります。レベルAAAも同様です。

また、それぞれ、代替版を提供するという方法もあります。もし、アクセシビリティ対応することがどうしても難しいというコンテンツであれば、代替版の提供も検討してみてください。この「適合している代替版」については、附属書AのA.16に書かれています。

適合している代替版(conforming alternate version)

次の事項を全て満たす版のことを指す。

  • a) 指定されたレベルで適合している。
  • b) 同じ情報及び機能の全てを同一の自然言語で提供している。
  • c) 不適合コンテンツと同時に更新されている。
  • d) 次に示す事項のうち少なくとも一つを満たしている。
    • 1) アクセシビリティ サポーテッドなメカニズムを用いて,不適合ページから適合版へ到達できる。
    • 2) 不適合版に到達できるのは,適合版からだけである。
    • 3) 不適合版に到達できるのは,適合版に到達するメカニズムも提供している適合ページからだけである。

適合している代替版とは、代替版が指定されたレベルで適合していることなどが必要ですが、それだけではなく、代替版への遷移についても書かれています。適合版が不適合版(適合できなかった元のコンテンツ)と同一の情報を持ち、不適合版から適合版に遷移できるなど、適合版が使えるようになっていることが求められています。適合版を用意しても、そこに移動できないのであれば、適合版が使えないためです。

引用元:JIS X 8341-3:2016 高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ

ページの先頭に戻る