連載記事ウェブアクセシビリティを知ろう
連載25:ウェブページ全体、プロセス全体の適合要件(JIS X 8341-3解説(5))
渡辺 昌洋
2022年10月28日
今回も、5.適合について解説していきます。ウェブページ全体、プロセス全体の適合要件についてお話しします。適合の対象はご存じでしょうか。5.1.2ウェブページ全体に書いてあります。
5.1.2 ウェブページ全体
適合(及び適合レベル)はウェブページ全体に対するものだけであり,ウェブページの一部が除外されている場合には適合にならない。
このように、ウェブページ全体と書かれています。5.1.2では、ウェブページ全体に対して、適合か不適合かになるのであって、一部分を除外してはならないということが述べられています。例えば、バナー広告がある場合に、バナー広告を除けば適合であるとは言えないわけです。なお、ここにはウェブサイト(ウェブページの集合)という概念は出てきません。2010年版のJIS X 8341-3では「ウェブページ一式」という言葉を追加して、ウェブサイトについても規定しましたが、2016年版では、WCAG 2.0(ISO/IEC40500)に合わせて、ウェブページが対象となっています。適合の単位がウェブページごとであることは覚えておいてください。
次の5.1.3プロセス全体は、ウェブページ全体の例外とも言えます。
ウェブページがプロセスを提示する一連の流れのウェブページ群(つまり,ある目的を達成するために完了させる必要のある一連の手順)に含まれる場合,そのプロセス中の全てのウェブページが指定したレベル又はそれ以上のレベルで適合している(もし,プロセス中のウェブページが一つでも特定のレベル又はそれ以上のレベルに適合していない場合,そのレベルに適合できない。)。
これは登録フォームを思い浮かべると理解しやすいと思います。ウェブページAでは氏名や住所を登録し、「次へ」ボタンを押すと表示されるウェブページBでパスワードを登録し、「次へ」ボタンを押すと同意事項が書かれたウェブページCが表示され、「同意」ボタンを押すとユーザ登録が完了しウェブページDが表示されるとします。この場合、ウェブページAが適合とするためには、ウェブページB、C、Dも同時に適合としなくてはならないということになります。これは、ユーザ登録するという目的を達成するために完了させる必要のある一連の手順に、ウェブページA、B、C、Dが含まれるためです。
引用元:JIS X 8341-3:2016 高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ