連載記事ウェブアクセシビリティを知ろう

連載26:アクセシビリティサポーテッド(JIS X 8341-3解説(6))

渡辺 昌洋
2022年11月17日

今回も、5.適合について解説していきます。アクセシビリティサポーテッドについて解説します。アクセシビリティサポーテッドは理解しにくい用語の一つかもしれませんが、非常に重要です。5.1.4には次のように書かれています。

5.1.4 技術のアクセシビリティ サポーテッドな使用方法だけ

達成基準を満たすために,用いる技術のアクセシビリティ サポーテッドな使用方法だけに依存している。アクセシビリティ サポーテッドではない方法で提供されている情報又は機能は,アクセシビリティ サポーテッドな方法でも利用できる[Understanding accessibility support外部サイトを別ウインドウで開きますを参照]。

ここで、一般的なウェブアクセシビリティを考えてみましょう。例えば、画像に代替テキストをつけるなどの工夫(アクセシビリティ対応)をして、音声読み上げソフトが代替テキストを読み上げたとします。これを、もう少し細かく考えてみましょう。ウェブコンテンツ制作者がHTMLというウェブコンテンツ技術を使って、img要素のalt属性に「こんにちは」と記載します。これに対し、音声読み上げソフトはalt属性の値「こんにちは」を読み上げたとします。このとき、音声読み上げソフトが代替テキストの読み上げをサポートしていると言えます。逆に言うと、代替テキストの読み上げは音声読み上げソフトによってサポートされている(アクセシビリティサポーテッドである)と言えます。

そのためには、「alt属性に代替テキストを設定する」という決まりをウェブコンテンツ制作者も理解し、音声読み上げソフトも理解している必要があります。ウェブコンテンツ制作者からすると、「alt属性に代替テキストを設定する」という使用方法が、想定する音声読み上げソフトによってアクセシビリティサポーテッドであるならば、その使用方法は、「用いる技術のアクセシビリティ サポーテッドな使用方法」であるということになります。ここで、用いる技術の「技術」はウェブコンテンツ技術を表しています。ウェブコンテンツ技術の例は、WCAG 2.0達成方法集外部サイトを別ウインドウで開きますを見ると理解しやすいかもしれません。達成方法はG(一般)、H(HTMLとXHTML)、C(CSS)、SCR(クライアントサイドスクリプト)などと分けられています。これらはウェブコンテンツ技術と考えることができます。実際には、HTML4.01などとバージョンもあるので、もう少し細かい単位になります。前述の例ですと、「H37:img要素のalt属性を使用する」が対応します。ここで用いられているウェブコンテンツ技術は、HTML4.01などとなります。

次に「依存している」ということの意味ですが、適合の根拠になっているということです。前述の例だと、「alt属性に代替テキストを書く」という使用方法(達成方法H37)が、適合の根拠になっているということです。達成基準1.1.1は次のような基準です。
利用者に提示される全ての非テキストコンテンツには,同等の目的を果たす代替テキストが提供されている。ただし,次の場合は除く(レベルA)。
ここでは、代替テキストを提供しなさいと書いてありますが、alt属性を使いなさいとは書いてありません。alt属性を使うのか、あるいは他の方法を使うのかは、ウェブコンテンツ制作者が決めるわけですが、いずれかの方法により代替テキストを提供すれば、達成基準1.1.1を満たすことになります。もし、alt属性を使って達成基準1.1.1を満たしていると主張するのであれば、想定する音声読み上げソフトもalt属性を読み上げる(アクセシビリティサポーテッドである)必要があります。

WCAG 2.0の原案では、「アクセシビリティ サポーテッドな技術だけ」というような表現であったと記憶しています。技術をウェブコンテンツ技術と考えると、例えば、属性1がアクセシビリティサポーテッドであったとしても、属性2がアクセシビリティサポーテッドではない場合、そのウェブコンテンツ技術自体がアクセシビリティサポーテッドではないということになってしまいます。そのため、「用いる技術のアクセシビリティサポーテッドな使用方法」というように、より細かいレベルを表すように変更されたと思います。この表現によっても理解が難しくなっていると思います。より一般的な表現にしているので、具体的に何を表しているかが伝わりづらいと思います。

引用元:JIS X 8341-3:2016 高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ

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