連載記事ウェブアクセシビリティを知ろう

連載2:情報アクセシビリティの動向:欧州

山田 肇
2020年6月1日

2019年に欧州アクセシビリティ法(European Accessibility Act、EAA)が成立しました。EAAはコンピュータとOS、ATM・発券機・チェックイン機、スマートフォン、デジタルテレビ、電話サービスと電話機、視聴覚メディアを対象とし、航空・バス・鉄道・水上の旅客輸送サービスで利用されるウェブサイト・モバイルアプリ・eチケット等、銀行サービス、電子書籍、電子商取引も範囲に入ります。

EAAの目的は「特定の製品サービス分野におけるアクセシビリティ基準に関わる加盟国の法規制を統一する方向に動かし、域内での製品・サービスの自由流通に対する障壁を除去すること」です。

EAAには付属資料として技術基準が添えられ、公共調達・民生用の区別なく、今後はアクセシビリティ対応が求められるようになりました。欧州連合加盟国は、EAAをベースに国内法規制を罰則規定も含めて制定し、2025年までに全面施行しなければなりません。

EAAは供給側に、域内のアクセシビリティ基準の統一で開発費用が削減され国境を超えた取引が容易になる、アクセシビリティ基準を満たした製品・サービスに対する市場規模が拡大するといった恩恵をもたらすと欧州委員会は分析しています。

EAAは需要側に位置付けられる障害者にも恩恵をもたらします。第一は、製品とサービスが利用できるようになるという自明の効果です。次に、市場競争が激化するために製品・サービスの価格が低下します。第三として、公共交通・教育・労働市場にアクセスする際の障壁が減り、より高度な教育が受けられるようになり職業選択の幅も広がります。最後に、製品・サービスの評価など、アクセシビリティの専門知識が必要な労働機会も増加する、とレポートは強調します。

なお、EAAとは別に、公式サイトのアクセシビリティ対応が欧州では公共機関の義務となっています。基準はわが国のウェブアクセシビリティ標準JIS X 8341-3と同等です。

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