連載記事ウェブアクセシビリティを知ろう

連載9:情報アクセシビリティの動向:日本

山田 肇
2021年1月29日

2018年に制定された『第4次障害者基本計画』は、障害者権利条約を参照して「社会のあらゆる場面でアクセシビリティ向上の視点を取り入れていく。」という基本的考え方を表明した。そして、「アクセシビリティに配慮したICTを始めとする新たな技術…(のうち)…利活用が可能なものについては積極的な導入を推進する。」と方針を打ち出した。また、「各府省における情報通信機器等の調達は、情報アクセシビリティの観点に配慮し、国際規格、日本工業規格への準拠・配慮に関する関係法令に基づいて実施する。」とした。

基本計画を施策に展開し実施するのは各府省の責務である。総務省と厚生労働省はデジタル活用共生社会実現会議を共宰し、2019年に報告書が公表された。

報告書の中では要点4が重要である。要約すると次の通りである。

自社で開発するICT機器・サービスが情報アクセシビリティ基準を満たしているか、企業等が自己申告する仕組みを導入する。政府情報システム調達の際、この自己申告を活用するよう関連府省に働きかける。

機器・サービスが情報アクセシビリティ基準を満たしているか企業等が自己申告し、政府情報システム調達で自己申告が活用されるようになれば、情報アクセシビリティに対応した機器・サービスの市場は拡大する。障害者等の利用可能性も増す。さらに、要点3「障害当事者が参加して障害者向けICT機器・サービスを開発するため、開発助成を強化する」が実施されれば、障害者の視点が開発に反映されて、利用可能性は一層高まるだろう。

参照する情報アクセシビリティ基準を定め、自己申告の書式を整える必要がある。総務省は作業部会を設置して検討を継続しており、近々、方針が定まる予定である。

政府調達で活用するには、『デジタル・ガバメント実行計画』に趣旨を盛り込んだうえで、『デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン』の改正に各府省が合意しなければならない。総務省から各府省への積極的な働きかけが期待される。

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