連載記事ウェブアクセシビリティを知ろう

連載14:日本版VPATとは何か

山田 肇
2021年4月12日

総務省・厚生労働省の共宰で2018年から19年にかけて開催された『デジタル活用共生社会実現会議』は、情報(コミュニケーション)アクセシビリティの確保施策として、「情報アクセシビリティ基準適合に関する自己評価の仕組みの導入」を求めた。

情報アクセシビリティ基準適合に関する自己評価の仕組みが具体化されたのが、日本版VPATである。

米国ではリハビリテーション法508条によって、連邦政府調達及び連邦政府が資金を提供した事業での調達で、情報アクセシビリティ対応が義務化されている。508条の技術基準が策定・公開されており、最新は2017年である。

自社製品・サービスが508条技術基準をどの程度満たしているかを、各社共通の書式で公開しようとVPATが開発された。フルスペルはVoluntary Product Accessibility Templateであり、「Voluntary」は「利用は任意」という意味である。しかし実際には、各社はVPATに沿って情報を公開している。

わが国にも情報アクセシビリティJIS規格X 8341シリーズがあり、JIS規格が定める技術基準を自社製品・サービスが満たしているかチェックできる。同様に、米国508条技術基準をどの程度満たしているか、あるいは、欧州アクセシビリティ法が定める技術基準でチェックすることもできる。

日本版VPATの場合、企業はJIS規格、508条技術基準、欧州基準から自由に選択して準拠状況を公表するようになっている。

欧米規制は日本企業にとって「非関税障壁」であったが、国内でも同様の書式が定められたので、二度手間を避けて、アクセシビリティ基準への準拠状況を公表できるようになった。

障害者等が製品・サービスを購入する際に、日本版VPATを参照するという利用方法が、当面想定されている。

その先には、欧米同様、政府調達に利用されるようになると期待される。

政府は『デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針』を2020年12月25日に閣議決定した。そこには、デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会を目指して、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を進めると宣言されている。

同日に決定した『デジタル・ガバメント実行計画』には、「企業による自社製品のアクセシビリティ向上に向けた自己評価様式の構築」を進めると明記されている。

公共調達での利用まで、あと一歩の段階である。

なお、ウェブコンテンツについてはJIS規格X 8341-3に技術基準が定められている。それゆえ、ウェブを開発した際にも、日本版VPATを用いての情報公開が可能である。

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