連載記事ウェブアクセシビリティを知ろう

連載18:ウェブアクセシビリティ:最低限守って欲しい三つのこと

山田 肇
2021年9月14日

公共機関ウェブのアクセシビリティを高めるために「みんなの公共サイト運用ガイドライン」が総務省から2016年に発表された。早急にJIS X 8341-3「ウェブコンテンツ」が規定するレベルAAへの準拠を求めたものだが、改善は進まず、公共機関ウェブは問題山積である。

ガイドライン作成の座長を務めた責任として、総務省にガイドラインの改定を求めている。最大の理由は153ページと長大であること。要求事項とその解説が一緒くたに並んでいるために、どこに要求事項があるのかが読み取りにくい。ガイドラインは地方公共団体を含め公共機関に広く送付されたが、忙しい職員が全ページを読むとは想像できない。要求事項は数ページにまとめ、解説と分離するのがよい。

第二の理由は、スマートフォン時代になったこと。JIS規格の元はISO 40500(2012年版)である。このISOの基になったWCAG 2.0は、すでに改定作業が開始している。WCAG 3.0の発行予定は2022年以降であり、発行後にISOを改定し、さらにJISを改定するので、スマートフォン時代を反映したウェブアクセシビリティ基準がJISとして発行されるには数年かかる。それを待つのではなく、最低限守ってほしいことをガイドラインに書くべきというのが、僕の意見である。

ガイドラインを守るためにはウェブの改修が必要になる。時間と費用が掛かるので、公共機関もすぐに対応するのはむずかしい。そこで、今すぐにでもできる三つのことをお願いする。

第一は、文字拡大や白黒反転といった支援技術を外すこと。ガイドラインには「ホームページ等において、音声読み上げ、文字拡大、文字色変更等の支援機能を提供する事例がありますが、これだけでは、ウェブアクセシビリティに対応しているとは言えません。」と書いてある。理由は簡単。文字拡大などの支援を必要とする利用者は、そのページにたどり着く前、ブラウザを開いた段階から、文字を拡大するなどの支援技術を利用しているからだ。

第二は、PDFだけでの情報提供を止めること。ガイドラインは「PDFファイルと同じ内容のページを作成し併せて掲載する」ことを推奨している。PDFだけでは、読み上げ順序が適切でなかったり、音声読み上げソフトが画像から情報を取得できなかったり、スマートフォンに小さく表示されて閲覧しづらい場合があるからだ。

第三は、掲載する前にわかりやすい文章か推敲すること。特に、Google翻訳などを利用して、完ぺきではないにしても、それなりに英訳されるか確認すること。公共機関ウェブには独自の翻訳アプリが搭載されている場合も多いが、日進月歩のGoogle翻訳に比べて精度が低く使い物にならない。その代わり、日本語がわからない利用者はGoogle翻訳を利用するので、対応しているかを確認するのは公共機関の義務といってもよい。きちんと翻訳されるようになれば、独自の翻訳アプリは外して構わない。

第三は、掲載する前にわかりやすい文章か推敲すること。特に、Google翻訳などを利用して、完ぺきではないにしても、それなりに英訳されるか確認すること。公共機関ウェブには独自の翻訳アプリが搭載されている場合も多いが、日進月歩のGoogle翻訳に比べて精度が低く使い物にならない。その代わり、日本語がわからない利用者はGoogle翻訳を利用するので、対応しているかを確認するのは公共機関の義務といってもよい。きちんと翻訳されるようになれば、独自の翻訳アプリは外して構わない。

支援技術を外し、PDFだけの情報提供を止め、Google翻訳でチェックしてから情報を掲載するようにするだけで、ウェブの訴求力は向上し、アクセシビリティも改善する。

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