連載記事ウェブアクセシビリティを知ろう
連載21:米国の障害者はデジタルアクセシビリティ規制を求めている
山田 肇
2022年3月11日
米国にある181の障害者団体が連名で司法省に請願書を提出した。提出日は2022年2月28日、あて先はクラーク司法省副次官補である。請願書はAmerican Foundation for the Blindのサイトで公開されている。
請願の骨子は、現バイデン政権の終わりまでにデジタルアクセシビリティ規制を完成させるように、司法省が優先的に取り組むことを求めるというものだ。
請願書は、デジタルアクセシビリティ規制には緊急の必要性があるとしている。それは、デジタルを活用しなければ今の社会で生きていけないからだ。パンデミックもあり、社会はデジタルへの依存を強めている。人々はデジタルを用いて生活し、オンラインでビジネスを行うようになっている。デジタル世界が、設計段階から、アクセシビリティに対応する重要性は増している。
請願書には、聴覚障害者は遠隔医療でコミュニケーションの障壁を経験したであるとか、視覚障害のある子どもはデジタル学習ツールにアクセスできなかったといった、障害者が直面している問題を列挙している。
時間がたてば、ますます問題は深刻になる恐れがある。そこで、現政権のうちにデジタルアクセシビリティ規制を完成させてほしいというわけだ。
米国では、公共機関にはアクセシビリティ対応の義務があるが、民間組織に対しては明確な義務規定はない。そのため、問題に直面する毎に、障害者は訴訟を起こし改善を求めてきた。根拠法はADA(障害を持つアメリカ人法)である。
一方、欧州では欧州アクセシビリティ法の制定とともに、公共機関も民間組織もアクセシビリティ対応が義務となりつつある。今回の請願書は、欧州流に民間組織に対しても規制するように求めるものと理解できる。
「情報アクセシビリティ法」の制定が見通せないわが国は、さらに後れを取る恐れがある。
