2026年ICPF・JWAC共催セミナー「当事者に聞く:ネット時代の国政選挙」開催報告
2026年5月29日(金曜日)に2026年ICPF・JWAC共催セミナー「当事者に聞く:ネット時代の国政選挙」をオンラインで開催いたしました。
本セミナーは、過去2回実施されたICPFセミナーの第3回として実施されました。
講演者として、
- 阿部 直美(国際協力機構(JICA)ウズベキスタン事務所駐在員)
- 田中 章仁(NTTクラルティ株式会社営業部アクセシビリティ推進室担当課長)
当日は、約40名の方々にご参加いただきました。ご参加いただき、誠にありがとうございました。
開催概要
開催日時
2026年5月29日(水曜日)
19時から20時30分
会場
zoomでのオンラインセミナー
講演者
- 阿部 直美(国際協力機構(JICA)ウズベキスタン事務所駐在員)
- 田中 章仁(NTTクラルティ株式会社営業部アクセシビリティ推進室担当課長)
司会
山田 肇(ICPF理事長、JWAC理事)
講演内容の概要
冒頭、山田氏が過去二回のセミナーの要約を紹介した。
第1回(3月27日)では識者に意見を聞いた。意見聴取と議論の結論は次の通りであった。
- 投票所入場券による本人確認ではなりすましを防げないなどアナログ制度にも不正リスクはあるが、社会的に許容されている。それをネット投票に切り替えようというとゼロリスクを求めるのは過剰である。
- ネットを利用した公職選挙には確かに課題もあるが、現行制度と比較考量したうえで政治的に決断するように求めたい。
第2回(4月30日)は「政治家に聞く」と題して、中道、自由民主党、新党みらい、日本維新の会の議員・元議員から意見を聞いた。
- 政治活動自体についても、選挙広報や投票方法などの選挙制度についても、デジタルを利用する方向に変えていく必要があるという点で、四名の政治家の意見は一致した。
- ネット投票については、在外投票を第一歩として導入していくという前向きの共通意思が表明された。
今日は参政権が行使できない悩みを抱えている当事者、在外邦人と障害者の意見を聞くことにした。
セミナーは、意見表明者と司会者の対談形式で行われた。阿部氏との対談内容は要約次の通りであった。
- 阿部氏はJICAウズベキスタン事務所で民間連携と産業開発を担当している。
- 在外投票制度は制度開始時から利用し、すでに25年程度になる。その間に首都から離れたカザフスタン・アルマティに5年間住んでいた際には、大使館に出向いての在外投票ができなかった。現在はウズベキスタンの首都タシケントで仕事をしているので、大使館での投票を利用している。
- 大使館での投票以外に郵便投票という代替手段がある。しかし、郵便システムが整備されておらず送付に時間を要するため、大使館での投票を在外邦人の多くは基本的な方法として利用している。
- 大使館での投票には職員数名が立ち会うなど、職員に負担がかかる。投票用紙は表に選挙管理委員会の住所を書き、二重に封入したうえで取りまとめられる。大使館員がそれを日本まで持参するか、国際宅配便で日本に送付すると思われる。日本に届くのに時間を費やすためだと思われるが、日本での投票日の8日前に大使館での投票は締め切られる。
- ネット選挙が実装されれば現在の在外選挙手続きの不便さを解決できる。ネット投票ではパスポートやマイナカードで本人確認すればよい。
- 政党の公約情報を得ることについて、選挙公報が届かない在外の有権者には課題がある。ネットで情報を確認するしかないが、それだけでは不十分である。投票締め切り日以降に新しい情報を得ても、投票を変えるわけにもいかない。
- 最近は、行政手続きでもネットを利用できるようになっている。たとえば在留証明書の発行などもネットでできる。この利便を在外投票にも拡大してほしいと願っている。
次に田中氏と対談した。
- 視覚障害のある田中氏には、点字を添えた投票所入場券が郵送されてくる。しかし、投票場所などの詳細には点字が付いていないので、ガイドヘルパーに読んでもらう必要がある。
- 投票所は近隣の小学校だが、一人では移動が困難なため、市役所での事前投票を選択している。自身は文字を書けるため自分で投票するが、他の視覚障害者は代筆が必要になる。
- 参加者の芳賀優子氏が代筆(代理投票)について説明した。秘密投票という選挙の基本が確保されていない大きな問題があるが、視覚障害者が投票に出向くと代理投票に誘導されてしまう。成人に達してから視覚を失った人には、秘密投票できないのは大きなショックである。アクセシビリティの高いネット投票が実現すればこの問題が解決できる。
- 選挙候補の情報をどう取得するかについて議論された。ネットで情報を調べることが主要な手段であるが、政党の公約が画像PDFで提供されたり、音声読み上げができなかったりすることが障壁となっている。障害者への合理的な配慮が不足している政党には投票する気になれない。
- マイナポータルにはある程度までアクセシビリティへの対応がある。しかし、何に利用できるかが判然としないので、アプリは入手しているが頻繁には使用していない。たとえば、ガイドヘルパー更新手続きなどの手続きをマイナポータルで行えるよう改善すべきである。更新手続き書類をガイドヘルパーに代理で記載してもらうという現行の手続きは改めるのがよい。
- 四つの政党の政治家から「在外投票からのスモールスタート」アプローチが提案されたが、障害者も含めた包括的な対応を希望する。スモールスタートして動作を確認して法律を改正して、という手順では、さらに10年待たされるかもしれないからだ。
セミナーの結論は次のとおりであった。
- 在外邦人や障害者は参政権が実質的には確保されていない。ネット投票には、この問題を解決する可能性がある。マイナカードでの本人確認を用いるネット投票の実現に期待する。
- 「在外投票からのスモールスタート」アプローチでは、障害者の抱える問題の解決に年月がかかることになる。当事者としては同時スタートを期待する。

