連載記事ウェブアクセシビリティを知ろう

連載22:ウェブアクセシビリティとADAに関する手引き(その3)

山田 肇
2022年3月25日

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(手引き本文)

ADAがウェブコンテンツにアクセシビリティ対応を求めるのは

障害を持つアメリカ人法は、州政府および地方自治体(タイトルII)、および広く市民を対象とする企業(タイトルIII)に適用される。

州政府および地方自治体(タイトルII)

ADAのタイトルIIは、州政府および地方自治体のすべてのサービス、プログラム、および活動における障害者に対する差別を禁止している。州政府および地方自治体は、障害者とのコミュニケーションが、他の人々とのコミュニケーションと同じくらい効果的であると保証する措置を講じる必要がある。現在、多くの州政府および地方自治体のサービス、プログラム、および活動がウェブ上で提供されている。たとえば、次のようなものがある。

  • 不在者投票の申請
  • チケットまたは料金の支払い
  • 警察への報告書の提出
  • バーチャルタウンミーティングへの参加
  • 税務書類の提出
  • 学校または学校プログラムへの登録
  • 州政府の福利厚生プログラムへの申し込み

アクセシビリティ非対応のウェブサイトは、障害を持つ人々が公的機関のサイトを通じて利用できるプログラム、サービス、および活動にアクセスする可能性を制限する恐れがある。たとえば、コミュニティカレッジのクラスへのオンライン登録などである。

それゆえ、ウェブ上で提供されるものを含み、州政府および地方自治体が提供するすべてのサービス、プログラム、または活動にADAの要件が適用されるという立場を、司法省は一貫して取っている。

広く市民を対象とする事業(タイトルIII)

タイトルIIIは、広く市民を対象とする企業(ADAでは「公共施設」とも呼ばれる)による障害者に対する差別を禁止している。ADAは、商品、サービス、施設、おまけ、特典、または宿泊施設を完全かつ平等に障害を持つ人々が享受できるように、広く市民を対象とする企業に求めている。広く市民を対象とする企業は、障害のある個人と効果的にコミュニケーションをとるために、必要に応じて、適切なコミュニケーション支援およびサービス(「補助支援およびサービス」と呼ばれる)を提供する措置を講じる必要がある。コミュニケーション支援とサービスには、たとえば通訳者、メモ係、キャプション、または補助的なリスニングデバイスを含めることができる。広く市民を対象とするビジネスの例:

  • 小売店、その他の販売店
  • 銀行
  • ホテル、旅館、モーテル
  • 病院および診療所
  • 飲食店
  • 講堂、劇場、スポーツアリーナ

アクセシビリティに対応しないウェブサイトは、公共施設のサイトを通じて利用できる商品、サービス、および特典に障害を持つ人々がアクセスする可能性を制限する恐れがある。たとえば、退役軍人のサービス組織によるイベント登録フォームである。

そのため、ウェブ上で提供されるものを含み、公共施設によって提供されるすべての商品、サービス、特典、または活動にADAの要件が適用されるという立場を、司法省は一貫して取っている。

(解説)

ADAは州政府や地方自治体に加えて、広く市民を対象とする企業にも適用される。わが国に当てはめても、銀行、ホテル、病院、劇場などへの適用に違和感がないだろう。

これに加えて、小売店や飲食店も対象とするとしている点は、ADAが障害者のための人権法であり、小売店や飲食店へのアクセスができないのは人権を侵害するという考え方によるものである。

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